レクチャー/プロジェクト

トップページ >  レクチャー/プロジェクト > 情報を考えるシリーズ

情報を考えるシリーズ 詳細

2006年11月24日 |プロジェクト
■【情報を考えるシリーズ第5回】
市民セクター全国会議2006協賛プログラム
「市民セクターがメディアを持つ時 」〜市民メディアの現状と展望〜

 情報化社会の進展に伴い、市民がインターネットを用いて積極的に情報を発信し始めている。特に、音声や動画配信サイトの普及は目まぐるしい。また、市民が記事を投稿できるインターネット新聞も発刊された。今や、大手の新聞社・テレビ局・ラジオ局を使わなくても、市民がその独自の視点と価値観をもって情報を選択し、それを広く世に問いかけることができるようになってきた。まさに、「市民メディア」時代の到来である。

  では、市民セクターはこの市民メディアとどのように付き合えばよいのか。ここでは、市民メディアとは何か、コマーシャリズムとの関係、人や社会をどう変えるのか、Mixiではだめなのか、今後市民セクターはどう変わるのかを行政、研究者、市民メディアと共に考えました。

開催日程
2006年11月24日 13:30〜16:30
開催概要

●日時

2006年11月24日 13:30?16:30


●会場

東京都千代田区丸の内2-5-2 三菱電機ビルエムプラス 1Fシリウス
http://www.emplus.jp/faq/index.html

●主催・共催など

主催 / 特定非営利活動法人イーパーツ
備考/ 市民セクター全国会議2006への協賛プログラム

●参加者

市民セクター全国会議2006参加者から50名

プログラムスケジュール

キースピーチ :「市民メディアの現状と期待」(13:30?13:55)


総務省関東総合通信局 企画監理官 島田利明 氏

総務省関東総合通信局は、もともとは放送などの無線局の免許や電波監理業務を行ってきた。 平成元年より地域振興行政として自治体の通信インフラ整備などを手がけ、現在はユビキタス社会構築へ 向けて民間企業や自治体へ情報通信行政を行っている。

その一方で、地域住民とどのように連携してくかが課題となってきた。昨今のインターネットの普及は、一般の方々の情報発信を活性化させるのみならず、熊本県山江村民テレビのように まちおこしにも大きく寄与している。関東総合通信局では、この地域メディアの動きをバックアップする為、関東ICT推進NPO連絡協議会を通じて地域セミナーや調査研究を行ってきた。平成17年度は「地域メディアの有効活用事例集」を作成した。

この調査により、地域住民が行政や教育機関と連携し情報発信、地域メディアが番組の一部を地域住民に開放、 住民自ら地域メディアを運営し、過疎化に悩む地域を元気にするなど多くの地域活性化の事例を多くみることができた。このような地域メディアによる活性化は、まだ一部地域で実施されているに過ぎないが、自分達も行ってみたいという反響は大きい。そこで平成18年度事業として、地域からの情報発信をどのようにしたらよいのかを解説する「地域メディアガイドブック」を現在作成中である。また、都内近郊に情報発信の拠点をつくれないか検討している。

地域メディアは、マスメディアと対局に語られることが多い。 しかし、災害時などを想定してみると、前者は被災地域内の災害情報を集約し発信、 後者はそれらをいち早くワイド情報として国民全体へ提供できるなど、お互いに特質を補完することが望ましい。 特に、災害直後には、地域メディアだけが災害ボランティアと連携して適切な地域情報を発信できる。 それを実現させる為には、地域メディアが継続的に地域に関わることが必要である


参考URL 関東総合通信局 http://www.lanto-bt.go.jp/

事例報告:世田谷テレビ、Our Planet-TV、OhmyNews(13:55?14:55)


世田谷テレビ http://www.stv.sakura.ne.jp/
Our Planet-TV http://www.ourplanet-tv.org/
OhmyNews http://www.ohmynews.co.jp/

パネルディスカッション:(15:00?16:30)


●問題提起;市民メディアはどんなメディアか?


イーパーツ 会田和弘

市民メディアが今注目を浴びている。市民セクターはそれをどうに役立てることができるだろう。ます、市民メディアはどのようなものかみてみたい。

先日、学生にいくつかの市民メディアを見てもらいアンケートをとってみたところ、次のような意見が帰ってきた。「マスメディアが、視聴率やスポンサーに配慮して誰にでも受け入れられやすい内容、どこにでもある番組を提供するのに対して、発信者の主張が直接伝わってくる」、Our Planet-TV『刑務所は変わったか?』のように「受刑者の人権を取り上げることはマスメディアではなかなかできない」「マスコミは一度取り上げた後はなかなか報道しない」などプラスの評価がある一方、「誰でもが発信できるということは、自分勝手な発信になるのでは?」「取材能力・編集能力はどの程度あるのか?」「信頼性は?」など疑問視する意見もあった。総じて、マスメディア=営利目的、市民メディア=非営利という図式が一般には浸透しているように思える。 2007年9月7?9日横浜で市民メディアサミット06が開催された。 その報告がGEIC『つな環第9号』そこで市民メディアサミット06主催者が、市民メディアはマスメディアと異なり次のことができるとまとめている。

1)当事者からの 情報発信
2)全国的な話題にならないローカルな話題やニュースを
 伝える
3)マイノリティや弱者の意見や声を拾う
4)小さな問題を 定点観測的に取り上げる
(「つな環」第9号、原・松原両氏対談「市民発メディアが社会を変える」P.4より)

しかし、数百万人のユーザを抱えるMixiで、これらのかなりのことができるのではないだろうか。事実、Mixiのコミュニティでは様々な市民活動が行われている。すると、マスメディアだからできない、マスだから市民メディアではないという視点自体が疑問となってくる。 ここで、市民メディアとはどんなもので、市民セクターはそれをどう使ったらよいのかを、もう少し現状を踏まえ突っ込んで考える必要があるのではないだろうか?


参考URL 「市民にとってメディアとは」
http://157.205.36.78/project/media05/
市民メディアサミット06
http://alternative-media.jp/
GEIC「つな環第9号」
http://www.geic.or.jp/geic/2006/info/tsuna/09/

慶応義塾大学 金山智子 氏

市民メディアというと、今ではネットが多く使われているが、その歴史からみてみると1970年代の市民活動から始まった。社会がマスメディアに関われば関わるほどその商業主義や画一性に問題がなり、「メディアの民主化」や「市民のアクセス権」を主張することから市民メディアが生まれた。

その流れは、日本では1980年代に地域再生を目的にしたCATVなどの地域コミュニティメディアとして伝わった。この動きは、市民セクターや音楽家など自分達でメディアを持ちたい人がコミュニティFMやフリーペーパーなどで細々とやってきたこともあり、なかなか一般には普及しなかった。しかし現在、インターネット・ブロードバンドの普及により、誰でも情報発信するようになり、人も多く集まるようになり、そしてそこに商業的価値を見いだしたMixiなど企業が参入することによって、一挙に市民メディアは拡張したと言える。Mixiはマスではあるが、その中のコミュニティでは子犬の里親探しなどに代表されるようにいろいろな市民活動が成果を上げている。OhmyNewsも多くの市民記者がかなりの記事を書いている。そこにプロが編集という形で加わっているのは興味深い。また、産経新聞もIzaで自社の記事に市民の声を反映させるなど、市民メディアはマス化していると同時に、プロが市民メディアの観点を無視できない状況になってきている。 これは日本だけに見られる現象ではない。

市民メディアは、マスメディアとの違っているのは、次の点であろう。

・「アクセス」と「参加」がキーの参加型メディア
・メディア制作のプロではない個人やコミュニティが
 自分の意見を表現する場
・報道取材ではなく、考え・意見・視点・情熱などの
 「共有」
・自分が関心があるもの伝える「当事者が語る力」

このような市民メディアは、市民セクターにとってどう役立つか。まず、現在は情報がなければ存在しないと同じに思われるところがある。ゆえに、自分たちの活動を伝えるということでは大変役立つ。また、同じ課題に取り組む人達との横のネットワークを強化することもできる。また、ブログなどを見ればわかるが、その書き手を信用してその情報を信用する傾向がある。市民セクターに長年関ってきた人は、その人の出す情報が信用されてきた人でもあることから、信頼できる市民メディアとなりうる可能性は大きい。

しかし、市民メディアにはまだ多くの課題が残っている。まず、市民メディアが多くあり過ぎてどれを使ったらよいのか選択するのが難しい。これだけ誰でも情報発信できる状況になると、発信する全員が、個人情報や著作権などに配慮しどういう情報は発信してよいのか悪いのかを見極めるリテラシーをもっていると限らない。市民メディアとコマーシャリズムの問題もある。市民メディアに企業が参入してきていることは既に述べたが、その企業がもし動物実験をやっていた場合、市民セクターのミッションとどう整合性をとるかを考えなければならないだろう。また市民メディアが発信した後、それをどう活動につなげていくのかも考えていかなければならないだろう。


●市民メディアとコマーシャリズム


イーパーツ 会田

金山さんに、市民メディアについて明確にまとめて頂きました。また、市民メディアが抱える課題をいくつか出して頂きました。その中から「市民メディアとコマーシャリズム」を少し考えたい。

市民メディアは営利的でないのゆえ自由に好きなことを発信できるという印象がある。しかし、市民メディアであっても活動を続けるにはお金はかかる。そこで、企業等から助成を受けるまたは企業とビジネス上パートナーシップを積極的に組むという解決手段があると思う。一方、市民メディアは特定の組織から経済的に独立しているべきだ、そこにマスメディアとの違いがあるという意見もある。そこで、活動資金の確保やスポンサーというものをどのように考えておられるのかをお聞きしたい。


OurPlanet-TV 池田佳代 氏

OurPlanet-TVは発足当時から自主独立でやりたいということで、番組づくりに大きな所からお金をもらわないことにしてきた。それは、既存のメディアを見ていると、経済的支援によって報道したいものが思うように報道できないという足かせが現実としてあるからだ。

現在、正会員の会費、ワークショップや講師派遣、企業の社会貢献ビデオの制作で活動費を得ている。ただ、企業の社会貢献の気運が高まってきたこともあり、もし私たちの目指す人権や環境保護を尊重してくれた上で市民の目で伝えるメディアを応援したいというのであれば、その支援を受けてもよいのではと思っている。また、会員制して番組配信料をもらうよりも、スポンサーを広くつのるなど門を開く方がよいのでは、という声も周りから出てきている。みんなが参加できるメディアであれば、企業に参加してもらってもよいのではないか。


OhmyNews 田中康文 氏

韓国のOhmyNewsは広告収入が7割、日本でも同じモデルでと考えている。ただ、Web広告で収益を上げていこうとすると、ひとつひとつの記事がどうであるかというよりも、全体としてどういうコンテンツであるか、どういう反響がありどれだけのページビューがあるかが重要だ。だから、ひとりひとりの市民記者が広告主との関係を考えずに情報を発信できる。今後このようなモデルで発展していくと思う。事実、OhmyNewsでは、携帯電話の広告の下に電磁波の記事を載せるなど、編集時にスポンサーに気を使っていない。むしろ、このようなことはOhmyNewsのモデルの運命と言ってもよい。市民記者が論理的に記事を書いてきて、それが事実であればそれを掲載せざろう得ない。OhmyNewsは、ビジネスモデルとして投資家との関係ではメディアの独立性は保たれている。


世田谷テレビ 中山マサオ 氏

まず、何にお金がかかるか考えた方がよい。世田谷テレビはお金がかかっていない。だからスポンサーはいらない。 これはボクの考えでスタッフにいうと怒られてしまうが、お金をかけて放送局をやったらそれは地域メディアではなくなるような気がする。お金があればいくらでも放送局は作れる。 マスメディアも作れる。もしそうやって影響力のあるメディアをつくったら権威がうまれ、マスメディアと同じになってしまうのではないか。

「今日、世田谷線を無賃乗車してしまいました」と放送するメディアに東急電鉄はお金をだすだろうか。もし東急電鉄からお金ももらっていたら、ボクはそういう発言を差し控えて下さいと言わなければならない。それでは、発信できる内容がどんどん制限されていくことになる。そうなるよりも、お金はもらわないで、東急電鉄の車掌さんなどが地域メディアの世田谷テレビに出演してくれる方がうれしい。実際、いまそういう良い関係が地域や企業となり立っている。お金をもらうことでそれを壊したくない。

お金がかかるとすれば人件費だろう。世田谷テレビは、他に生業がある人がスタッフなので人件費はかからない。むしろそれよりも、世田谷テレビを彼らが生業の場で感じたことや経験を発信する場にしたいと考えている。


慶応義塾大学 金山 氏

お金がかからない市民メディアもあるが、かかるところもある。ボランティアでやるところもあるが、OhmyNewsのように広告をとって割り切ってやっているところもある。商業主義のマスメディアに対抗して市民メディアが儲けてはいけないという考えをもつ人もいるが、現実としていろいろなモデルがすでに存在している。もはや、良い悪いなどあるべき論では語れない時代になってきているのではないだろうか。電磁波に問題意識をもっている市民記者は携帯電話がスポンサーのメディアには書かないというように、それをよしとする人はそこでやるだろうし、そうでない人は自分がよし思う市民メディアを選んでいく時代になってきた。そこでは、自分なりの価値基準に合うメディアを見つけること重要になってくるだろう。


イーパーツ 会田

中山さんは「お金をもうけるたら市民メディアではない」と言っているが、そこには発信する人を重視するという世田谷テレビ独特の考え方があるのではないか?放送される内容よりも、発信することで仲間が増え、地域メディアが増えていく過程に意味があると思っているのでないか?


世田谷テレビ 中山 氏

見ている人はどうでもよいということではない。しかし、確かに始めに発信ありきだと思う。ソファーに座って見ていた人が発信側に回った時にわかる視聴者のリアクション、価値観の転換、増えていく仲間、つながりは確かにある。そういうことを楽しいと思う人が世田谷テレビに集まってきている。そのことは数字に表せないのが残念だ。


●市民メディアは人や社会をどう変えている?


イーパーツ 会田

世田谷テレビは、市民メディアとして放送するだけではなく、人をつなぐという側面も持っている。これは、金山さんから出された市民メディアがどう市民セクターの活動をつなぐかという課題に関連している。ここからは、この点でお話をお聞きしたい。発信したい人がいる、情報を欲しい人がいる、両者はうまくつながっていますか?


世田谷テレビ 中山 氏

世田谷テレビ上町放送局はたつなみ会というNPOの施設内にあるが、「ボランティアして欲しい」「こういう人が必要です」とSOSを発信した時に手があがる関係が、商店会・自治会・塾・大学などとできつつある。それは、上町の通りに世田谷テレビがあるからだと思う。放送局の前を通っている人がここは何だろうと覗いてくれたり、ミカンをもってきてくれたり、みんなでワイワイやっているサロンだからこそ、発信した情報が相手に届くのだと思う。


OurPlanet-TV 池田 氏

OurPlanet-TVの番組はどちらかというと大きな社会的課題を取り上げている。コミュニティ放送局として人々とつながることはないが、障害者の自立支援法を取り扱った番組 「そして、どう生きる?」が 放送されることで障害者とより深く関わることになった。また、イラク人質問題の 「みんな、空でつながっている? イラク拘束事件・今井紀明君に出会って?」は、同世代の若者に影響を与え、トークイベントが開催されるなど インターネットでの発信がリアルな場へと自然に展開しているようだ。

私たちがお手伝いしている 「オールニートニッポン」は「生きづらさ」を抱える若者に送るインターネット ラジオ番組だが、この放送を聞いた人達から掲示板へ意見が出されそれに対して反論や共感がまた書き込まれるなど 発信する側と聞き手の活発なやり取りがある。


OhmyNews 田中 氏

OhmyNewsでは、記事が社会とどうつながったのか、そのおもしろさについては規模の問題もあり、なかなか記者に提供できない。しかし、つながる為にはまずきちんと発信しなければならないだろう。市民記者は短い時間でスキルが一段階上がることを経験しているようだ。

何かを発信したい人は多くいる。だが、自分で記事を書いた経験がない人は、記事の内容や事実確認などでレベルが低い。しかし、発信しようとした瞬間にそのリテラシーは上がる。それは、編集部から「ここはもう少し追加取材してみたら」と言われたり、文献を調べたり、読者から酷評をもらったりするからだ。一度そういう経験をすると、新聞記事を読んで「ここはいい加減にまとめたな」などということが分かってくる。このように発信者がきちんとした記事が書くことで、ブログで検索されたりTrackbackで読者や社会と自然につながりやすくやすくなるのではないか。


イーパーツ 会田

ネットでつながる、ネットをきっかけにつながる、近所でつながるなど、いろいろなつながり方がある。市民セクターには、それをどううまく使うかのという能力が問われてくるのだろう。それはそれとして、田中さんから発信者になることで変わるという話がありましたが、実際にどのように変わるのでしょう。


世田谷テレビ 中山 氏

パソコンやビデオがつかえるようになる、それは当たり前。コミュニケーション能力、人と話せる能力が大きく変わると思う。今まで視聴者で「いやいや私は・・」と遠慮していた人が、放送に出演したことをきっかけに地域メディアの放送局長になった例は多い。「自分が思ってことなんか」「人様に言えるものではない」と思っていたのが、人とコミュニケーションをとっていくうちに自分のメッセージも人の役にたつと分かる時がある。その時、その人のスキルはぐっと上がり、いつの間にかスタッフをまとめていたりする。


慶応義塾大学 金山 氏

子育てしているお母さん方を調査した時に感じたことだが、自分がもっている何気ない情報を子育てで悩んでいるお母さんに発信しところ役に立ったと言われたという例があった。自分の持っている情報がみんなの情報になっていき、それが商店会と結びついて地域の情報へとなっていく過程を体験すると、自分の中で何かが変わり自分の価値を認められるようになる。また、行政マンがコミュニティ放送に出て、自分の話が市民に伝わったことで広報マンとして目覚めたということもある。そのような例は多く見られる。市民メディアは、確かに社会を変えるがその前に発信する人を変える力がある。


●Mixiではだめなのか?


Mixi
http://www.mixi.jp/
イーパーツ 会田

さて、ここから地域メディアは本当に必要かという話をしたい。若い世代を中心にMixiのような商業SNSが使われている。金山さんのお話にあったように、Mixiの中でも市民活動がなされており、Mixiがあれば地域メディアは特に必要ないという意見もある。確かに、Mixiは多くの人を集めることができるが、関心がなくなればすっと離れるという傾向もある。それが市民活動にとってどうなのかは疑問だ。



街スタ世田谷 世田谷テレビ 中山 氏

Mixiは嫌いだがすごいなと思う。特に、個人が思っていることや関心があることが、コミュニティ一覧や人のつながりを見ると一目でわかるのはすごい。

5年前、Usenの支援で 「街スタ世田谷」をつくった。そこで、同じようにコミュニティや地域の放送局を一覧でならべたことがある。 それとMixiとの違いは、実際に世田谷という場があることだと思う。「あそこへいけば会える」というような場づくりが地域メディアには重要だ。もしMixiでそれができたらすごい。


Mixi
クリエータ&デザイナー
コミュニティ
http://mixi.jp/
view_community.pl?
id=298
OurPlanet-TV 池田 氏

関心がなくなったらすっと離れてしまう関係はちょっとさみしいと思う。私自身はMixiはあまりやっていないのでよくわからないが、OurPlanet-TVのロゴをMixiのクリエータコミュニティに依頼したことがあった。 2日ぐらいに30件ほどの作品が寄せられた。この人を集めるパワーはすごいと思った。また、私たちのWebをみただけなのに、私たちのやろうとしていることを適格につかみデザインしてくれたのには感激した。かなりのスキルがある人が集まっているのだろう。そういう人たちが出会う場として、Mixiはすばらしい可能性をもっていると思う。


Flickr
http://www.
flicr.com/
慶應義塾大 金山 氏

グリーンピースの捕鯨反対バーチャルデモを写真投稿SNS「Flickr」と一緒にやった。それによって、単なる署名よりも大きくアピールできたようだ。このように、SNSは「つながる」ということでは大きな力を発揮する。

しかし、Mixiだけでコミュニケーションが十分だとは思わない。まず、SNSは会員制で閉じている。市民活動にとってオープンであることが重要ではないか。また、Mixiは若い人が中心であり、一方市民セクターは年配が多い。いろいろな視点があった方がよいという点で、いろいろなメディアが合った方がよい。また、SNS内でコミュニケーションの度合いを測る評価は、何人が見たか何人がレスを書いたかというシステムが多い。書き込みにしても、忙しくて書き込めない、とりあえず書いておこう、名刺代わりなどいろいろな場合があるにも関わらず、書き込みがないからその人は私に関心がないとするような評価は、安直なコミュニケーションではないか。Mixiも一つのメディアであってもよいが、私個人としては「街スタ世田谷」が気に入っている。


ホワイトバンド
http://www.
hottokenai.jp/

山江村民テレビ
http://www.ystv.jp/
世田谷テレビ 中山 氏

たぶん、顔を出すことが重要なのだと思う。そこに責任が生じてメディアになるのだと思う。Mixiで新しい放送局をつくろうという動きがあったが、今だにできていない。その場でぱっとつながるが、その先にが続かない。

昨年イーパーツで行ったシンポジウム「市民にとってメディアとは」でホワイトバンドのマエキタさんと山江村の岸本さんのディカッションがあった。ホワイトバンドもキャンドルナイトもネットの中で広がったものだが顔は出してない。Mixiはホワイトバンドと同じ都市型で自分から出て行かないで声をかけられるのをまっている文化。一方、山江村のおじいちゃん達は顔をどんどん出して、そこに責任がうまれ「ああ言ってたよね」と会いに行ける。顔を出しているところに責任があり信頼できるメディアがそこにある。顔を出すことでつながる安心感が重要ではないか。


イーパーツ 会田

確かに顔がみえることで信頼できるメディアになると思うが、たくさんつながる為ひろくつながる為にはMixiのような大きなメディアも必要ではないか。どちらがよいのかということではなく両方がうまく補完し合うことが必要なのだろう。


●市民セクターがメディアをもった時、今後の展望は?


OhmyNews 田中 氏

従来の市民セクターは横の繋がりがなかった。一方、NPOは、特定の目的をもって自発的に活動する、公益法人よりも簡易にミッションに応じてオープンにつながる、分野ごとに孤立しない組織を目指して作られた。そういうNPOの力を発揮できるツールが一つ増えたということだろう。何か持っているならとにかく発信し、それを続けることが重要。それが島になりそれがつながることで市民セクターがネットワークし、社会的課題をより解決できるようになるだろう。


OurPlanet-TV 池田 氏

情報を発信することや作品づくりに関わることで、市民セクターは多くのことを学ぶと思う。例えば、笑顔座っている親子の写真が実は幸せでない、空爆されて住む家もなくなった状況で一瞬笑ったところを切り抜いた場合もある。自分が映像をつくることで、映像のもつ良さと悪さが理解できるようになる。そのことから、正しく伝える術を学ぶことができるようになる。それは市民セクターが今後活動していく上で大きな力になるだろう。


慶應義塾大 金山 氏

ブロードバンドの普及で急速に市民メディアが広まったが、今後、市民が共有した情報をどうやって行動につなげるのかなど課題は多い。


イーパーツ 会田

タイトルの市民セクターに話が戻ってきたところで、非常に残念ですがもう時間となってしまいました。今後、市民セクターにとってメディアは重要なものになることは確実です。今回の議論が市民セクターの今後の活動の役に立つことを願っております。パネリストの皆さん貴重なご意見ありがとうございました。


※この記録は、議論の流れをわかりやすくする為、当日の発言に一部修正および加筆しております。




▼パネルディスカッションを終えて


イーパーツ 会田和弘

昨今、ブロードバンド化、PC性能の向上、制作ソフトウェアの普及などによって、Webのみならず放送局も個人でつくれるようになってきた。その一方で「インターネットは怖いもの」とされている。確かにインターネット自身はバーチャルであり、時にはその匿名性から犯罪の温床になる場合も否定できない。しかし、ディスカッションにあったように、インターネットは人や情報を確実につなげ社会を確実に動かしている。
今、様々なコミュニケーションの仕方がインターネット上にうまれ、人々はそれらを自由に取捨選択し相互に交流している。そこでは、情報発信なしには本当に必要な情報を得ることはできないと言っても過言ではない。その意味では、市民セクターも人々や社会に関わろうとすればするほど、積極的に情報を発信すべきだあると言える。市民セクターもメディア的機能をもって積極的に情報を発信し社会に関わらなければならない時代になってきたと言えよう。
パネリストの言葉を借りれば、そもそも「市民セクターは信頼されるべきメディアになりうる」存在である。世に信頼できるメディアはどれほどあるのかを考えると、市民セクターの潜在的な力は大きい。必要なのは、情報発信力であろう。発信者になるということは、パソコンを使い情報を単に流すということではない。一方的ではない情報、人に感動を与える情報を発するには、自分たちが何者であり何を考えてきたのかを自問し、どうすれば相手にわかってもらえるかを悩み工夫することでもある。このことは、市民セクターにとって公益に関わる以上当然とされてきたことである。ただ、インターネットの速い潮流になかなか乗り切れないだけだ。そんな時は「助けて」ということも大切ではないだろうか。きちんと声を上げれば、必ず心ある専門家が振り返ってくれる。情報発信力というのはまさにそういうものである。

出演者プロフィール


池田佳代 氏 Our Planet-TV 事務局長

http://www.ourplanet-tv.org/
Our Planet-TV 事務局長

東京ではマスメディアの流す大きな事件・事故などの情報が中心になりがちで、地域社会の課題や日々の営みなどがこぼれおちてしまうことが多い。TVや新聞に載りきれない情報、伝えていない情報を発信する媒体=オルタナティブメディアの価値を感じていたところ、同じような思いの仲間と出会う。その後、インターネットを通じて映像で人々が情報発信するメディア・OurPlanet-TVに参加。現在事務局業務を担当。


金山智子 氏 慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所助教授

慶応義塾大学メディア・コミュニケーション研究所助教授

オハイオ大学大学院博士課程修了(マス・コミュニケーション博士)。専門分野は市民メディア、コミュニティメディア、メディア・コミュニケーション論。主な著書『NPOのメディア戦略?悩みながら前進する米国NPOからのレッスン』(学文 社、2005)、『やさしいマスコミ入門?発信する市民への手引き』(勁草書房、2005)『地域をコミュニティ にするメディア』(慶應義塾大学出版会、刊行予定)。ボランティア活動を続けるともに、3つの非営利組織の役員を務める。千葉市在住。


田中康文 氏 OhmyNews編集局市民記者組織本部本部長

http://www.ohmynews.co.jp/
OhmyNews編集局市民記者組織本部本部長

大学卒業後、(社)経済団体連合会入局。社会貢献部、社会本部にて、企業とNPOの連携促進に向けた環境整備に携わる。1999年、韓国・全国経済人連合会出向。2002年に帰国し、韓国、ロシアなどを担当。

2004年に独立。アットニューストリーム(@NEWSTREAM)有限会社代表。日韓コンテンツビジネス、CSRコンサルタントなどの業務とともに、2006年から「オーマイニュース」に合流。編集局・市民記者組織本部長。

中山マサオ 氏 世田谷テレビ主宰

http://www.oresai.com/tv/
世田谷テレビ主宰

1977年生まれ。現在 地域インターネット放送局「世田谷テレビ」主宰。

広告代理店、映像プロダクションを経て、現在フリーランス地域映像ジャーナリスト。地元ケーブルテレビでの地域トピックスニュースの企画・制作、世田谷区役所広報広聴課にて職員への映像研修指導、大学でのeラーニングコンテンツ企画・制作・指導に携わるほか、雑誌「世田谷ライフ」や銭湯専門雑誌でのライターを行っている。

会田和弘 イーパーツ

http://157.205.36.78/
特定非営利活動法人 イーパーツ 常務理事

1997年AOL日本法人立ち上げ時より2004年まで子どものインターネットチャンネルの企画運営にかかわる。1998年よりリユースパソコン寄贈プログラムを実施、同時に著作権や個人情報保護、セキュリティ等の啓発活動を行う。最近のテーマは、情報セキュリティをわかりやすく伝える仕組み、市民セクターの効果的な情報発信など。ヨコハマ市民メディアサミット06運営委員。